花嫁の手紙


私は幼い頃、結婚にたくさんの夢を持っていました。

 

それは軽井沢の教会で挙式披露宴を行ないたいという事。

季節は風薫る五月である事。

時刻は太陽が最も高い場所に位置する正午である事。

純白のウエディングドレスをまといたいという事。

バージンロードはお父さんと共に進みたいという事。

ブーケはお母さんの手作りのものを持ちたいという事。

お色直しで華やかな振袖をまといたいという事。

そして何より、優しくて誠実でしっかりした人とずっと一緒にいたいという事です。

私の夢は今日、すべて叶いました。


私のお父さんは、ひとつの会社に三十八年間、黙って勤めあげた人です。

私はたったひとつの事を最後までやり遂げる辛抱強さをお父さんから学びました。


そしてお母さんは、昔からよく娘のブーケを手作りしたくて華道家になったと言っていました。

お母さんが今日私の為に手がけてくれたブーケ、よく見ると細かい所まで気を配り、

ひとつひとつ丁寧に仕上げてくれている事がよく分かります。

私は愛情を持った気配りをお母さんに教わりました。


私は今日までたくさんの心配や迷惑をかけてしまいました。

それでも私の幸せを願い続けてくれた両親に感謝しています。

生まれ変わっても、またみんなで家族になりたいと願っています。


両親は私にお金で買えないものをたくさんくれました。

それは愛情や、気配り、努力、夢を持つ事、継続する事、度胸やセンス、力強さといったものであり、

私のかけがえのない財産になっています。


今まで色々な方に与えていただいたものをたいせつにしながら

今度は人にあげられる私になります。


結びになりますが、私を快く迎えてくださった新しいお父さん、お母さん。

彼をしっかりとした、優しく頼もしい人に育ててくださり、有難うございます。

また、私のお腹に宿っている新しい命も祝福してくださり、感謝しております。

私がお二人に出来るいちばんの親孝行は、彼とこれから生まれてくる子をたいせつにし続ける事だと思っています。

私もお二人のように、この子をしっかりした優しく頼もしい子に育てる事をお約束いたします。

父親のような人になりなさい、そう言って育てます。


今日は皆様、ご多忙の中、私たちの結婚式にご参列いただきまして、誠に有難うございます。

私たちはこれからどんな事があっても、お互いを助け合い、敬い合い、支え合い、幸せに生きてまいります。

本日は本当に有難うございました。