詩「誰もいない教会」

聞いてくれる?

わたしのわがまま。


わたし、あなたと行きたい所があるの。

誰もいない教会。

そこで結婚式を挙げたいの。

そう、ふたりだけの結婚式。

 

新郎はあなた。

新婦はわたし。


タキシードなし。

ウエディングドレスなし。

参列者、牧師、聖歌隊オルガニスト、式場担当者、いっさいなし。


共に腕を組み、バージンロードを進み、祭壇の前へ。

ベールアップなし、ブーケなし、讃美歌なし、指輪の交換なし。


あるのは誓いの言葉と、誓いのキスのみ。


お互い、家に帰れば家族がいる。

勿論、家族はたいせつ。

伴侶は運命の人だし、こどもも可愛い。

手放せないし、離れられない。


だけどわたしたち、お互いの事もたいせつ。


ふたりが恋人である事を、誰も知らない。

誰にも言えない。

言ってはいけない


だからせめてふたりだけの結婚式を挙げたい。


行ってくれる?

誰もいない教会へ。