詩「恋文」

 淡い桃色のパンプスを買った。

 白か黒しか買った事のない私の小さな冒険。

 きちんと両の足を収め、

 まっすぐスタンドミラーの前に立ってみる。

 後ろから、斜め前から、左から、

 様々な角度から、私を見ている私がいる。

 足がきれいに見える角度を研究する。

 このパンプス、とても気に入ったんだ。

 だからこれから

 あなたの住む街まで歩いていくの。

 てくてくてくてく、ずっと歩いていくんだ。

 

 髪が伸びた。

 ずいぶん伸びた。 

 雑誌で見た髪形を真似て結ってみる。

 大人っぽいなと思って、

 私はもう大人なんだと思った。

 この髪型、素敵でしょう?

 私によく似合うでしょう?

 見てよ。 

 そしてほめてよ。

 ねえ、恋しい人。

 

 私たち、まだ何だってできるのよ。

 何だってできるし、何にだってなれる。

 こんな事、

 みんな案外分かっていないけど、 

 本気だせば出来ない事なんて何もないよ。

 どうしてこんな事に

 今まで気づかなかったんだろう?

 みんなどうしてそんな事分からないの?

 本当よ。

 まだ何でも出来るし、

 なりたいものになれるよ!

 本当だってば!

 …だから?って、聞かれたら、

 返事に困っちゃうけどさ。

 

 あっ!しまった!

 嫌な女な所、いっぱい見られちゃった!

 変な所も、まずい所も!!

 私は頬を紅葉よりも赤らめています。

 お早めに、紅葉狩りにお越しください。

 

 あなたに恋しています。

 そのままのあなたに、

 一心に、恋しています。