腹鳴り嫁

昔、夫と結婚を決め、夫の家にご挨拶に伺った時の事。


緊張する私にお姑さんが開口一番
「末永くよろしくお願いします」
と言ってくれ、涙が出るほど嬉しかったです。
お舅さんも義兄さんも笑顔で温かく私を迎えてくれ、ほっとさせて下さいました。

 

ああこんな優しくて穏やかな家庭に育ったから、彼もこんなに優しい頼もしい人なんだとよく納得し、

私の方こそ、彼と彼の家族を生涯たいせつにしようと心に誓いました。

 

お舅さんとお姑さんがお寿司をとってくれ、みんなで和やかなひとときを過ごし、

ああこれから、本当に幸せな結婚生活が始まるのだと、幸せを噛みしめておりました。

 

お寿司をいただき、お茶を飲みながら、これからの事、

入籍の日取りや、結婚式をどこで挙げる、家をどこに建てる等、色々話し合っていたのですが、

ふと会話が途切れ、しんと静かになりました。

その静寂の中、私のお腹がぐーっと鳴ってしまったのです。

アラヤダ。笑うしかありません。

彼も横で仕方なさそうに笑っています。

 

するとお舅さんが

「ゆりこさん、いいんだよ。オナラくらい」

と、おっしゃいました。

オナラじゃないってば。

お姑さんがこうフォローしてくれました。

「お父さん、オナラじゃないよ。ゆりこさん、お腹が鳴ったんだよ」

 

オナラよりはいいけど、お腹が鳴るのも恥ずかしいですわい。

あーごめんなさいねー。

こんな腹鳴り嫁で。

 

あれから歳月は流れ…お陰様で、今も幸せです。

腹鳴り嫁、ここにあり。